周知のとおり、現在(2011年5月)日本におけるグライダーアクロ競技者数は一名。つまり私一人です。来年度の世界大会へ向けて訓練中のSさんを入れても2名。なぜこのように寂しい状況にあるのか、私にはわかりません。
グライダーアクロというと地味な印象があるのでしょうか?しかし実際に操縦した感覚は、パワー機のそれと同等です。プラスマイナス両端限界いっぱいに振りきれるGメーター、誰もが驚くロールレート、パワーアクロよりもめまぐるしく変化する姿勢、なにより、グライダーに特有の機体との一体感、空気を両腕に掴み引き剥がす感触、自身が速度エネルギーそのものと化す瞬間の心地良さ・・・いや、こんなことを列挙しても始まらないでしょう。飛行感覚は、飛行者にのみ帰属します。
まず、飛べる機体の存在。グライダーアクロを練習するためには、専用の競技機が必要です。ASK-21やプハッチなど、比較的ポピュラーな練習機でも、基礎的なアクロを行うことはできます。しかし、世界標準である無制限クラスの飛行を行うためには、MDM-1 FoxないしはSwiftといった機体が必要です。
昨年3月、無制限曲技専用機であるMDM-1 Foxが板倉滑空場にてロールアウトしました。購入/所有者は鐘尾みや子さん、日本のアクロ界の草分け的存在の一人であり、私自身の恩人でもあります。
鐘尾さんは、日本のグライダーアクロを発展させたい、ただそれだけのためにこのFoxを導入されました。我々はこのFoxに乗せていただき、たくさんの訓練を行うことができました。その間、鐘尾さん自身は機体の管理者に徹し、決して自身のフライトを行われることはありませんでした。我々は、鐘尾さんの意志の上で成長する鉱物のような存在でした。
鐘尾さんは、日本のグライダーアクロを発展させたい、ただそれだけのためにこのFoxを導入されました。我々はこのFoxに乗せていただき、たくさんの訓練を行うことができました。その間、鐘尾さん自身は機体の管理者に徹し、決して自身のフライトを行われることはありませんでした。我々は、鐘尾さんの意志の上で成長する鉱物のような存在でした。
鐘尾さんはまた、グライダーアクロの正式なジャッジでもあります。曲技飛行の練習にとって、地上からのジャッジングがいかに重要か・・・各国のトップ選手が口を揃えて言うことでもありますし、地上のジャッジこそが曲技飛行競技の採点者であるという事実からも、自然と理解できることでしょう。私は板倉滑空場で、鐘尾さんのジャッジングの受け、飛行における改善点を多数見出すことができました。
また、Foxは一人で組み立て、運用することができません。高度な専門知識を持ち、技能を有する人が数名そろって初めて運用することができます。私はこれまで数えきれないほどの日数、板倉滑空場で訓練を行って来ました。その訓練を欠くことなく支えてくれたのが、教官のSさん、整備士のNさんです。解散したRedFoxチームからの縁で、これまでずっとサポートしていただきました。
さらに、曲技飛行を行うためには、それを行う空域や、離陸する滑空場が必要です。ただでさえ危険行為とみなされてしまいがちな曲技飛行、練習場所の確保は往々にして最も困難な課題の一つとなります。鐘尾さんを始め先輩方は、これまで板倉滑空場において曲技飛行を行う基盤を築いてこられました。1200mから3分足らずで降下する曲技飛行ですが、現在では板倉滑空場における運航の一部として認めていただいています。
さらに、曲技飛行を行うためには、それを行う空域や、離陸する滑空場が必要です。ただでさえ危険行為とみなされてしまいがちな曲技飛行、練習場所の確保は往々にして最も困難な課題の一つとなります。鐘尾さんを始め先輩方は、これまで板倉滑空場において曲技飛行を行う基盤を築いてこられました。1200mから3分足らずで降下する曲技飛行ですが、現在では板倉滑空場における運航の一部として認めていただいています。
機体が存在し、ジャッジが常駐し、サポートしていただける方々にも恵まれ、飛べる場所もある。となると、足りないものは何でしょうか。共に高め合う競技者仲間にほかなりません。共に第一線で飛行し、トップ選手の技量レベルを知り、それの実現へと向けてお互いを評価しあう、そのようなチームが成立してこそ、国内での最良のトレーニングが可能となります。
私はそのようなチームの実現へ向けて、新人教育のためのルート作りを行っています。もちろん日本でも、今後新人教育が行われる予定はあります。しかし飛行回数・密度・技能の観点から見て、世界標準の技術を習得するためには、海外のトップ選手に師事した上での総仕上げを行う必要があるでしょう。今後、世界各国の競技者仲間たちの力を借りて、日本チーム発展の機会をオーガナイズしていきたいと考えています。現に今年、Sさんという方(社長でも医者でも弁護士でもありません。普通の会社員をされている方です)が国内で訓練を始められ、この夏にポーランドへ渡航し、集中訓練を行います。技量が充当できれば、来年は世界選手権へ参戦する予定です。