2014年9月4日木曜日

アレスティに無い科目をシーケンスに組み込む

現行のアレスティには、ローリングループ(注1)及びナイフエッジ飛行(ナイフエッジ・ループを含む:注2)は存在しない。存在しないからといって、飛行が不可能なわけではない。以下に、これらの機動を盛り込んだアンノウン・シーケンス図と、対応する飛行動画を並置する。これらの機動の可能なバリエーションは多岐に渡るが、試したものは以下のとおりである。

注1)ローリングループとは、ループの軌跡にロールを織り込む機動である。現行のアレスティにも、ループの天辺あるいは下辺に任意の弧角の範囲内で指定のロールを行う科目は存在するが、ここで私の言っているローリングループとは、弧角もロール角度も指定された科目を指す。
注2)ナイフエッジループとは、その名のとおりナイフエッジ状態での宙返りである。つまり、ヨー方向に向かって行うループ。鑑賞者に対して機体は常に背面もしくは腹面を見せた状態で円弧を描くことになる。

■ナイフエッジ系統

ホリゾンタル・ナイフエッジシーケンス1のfig2とfig3のつなぎ、シーケンス2のfig6とfig7のつなぎ、シーケンス3のfig10の天辺
普通のナイフエッジ飛行である。低速だと、基本水平飛行を保つことはできなかったが、ナイフエッジスクエアループの天辺のように、上昇滑りから下降滑りへの以降を伴った放物線機動の場合、機首の位置を一定に保つことにより、地上から見た際の浮き沈みを錯覚により相殺し、仮の水平ラインを出すことができるようだ。高速でのナイフエッジは、試すのを忘れてしまった。

垂直上昇からのクオーター・ナイフエッジループ(シーケンス1のfig2、シーケンス2のfig6、シーケンス3のfig10)
フライオーバーするハンマーを途中で止めるようなもの。ラダーを踏む際の速度が早すぎるとラダーが(胴体が??)失速するだけで、全く機首は転向してくれない。かといって遅すぎるとループ後の水平を保てない。エクストラ200だと90−100ktくらいがほどよい感じであった。水平飛行時においても、80ktがもっともラダーの効く速度帯であることはすでに確認されており、垂直上昇時の知見と整合的である。

ホリゾンタル・ナイフエッジからのクオーター・ナイフエッジループ(シーケンス2のfig7、シーケンス3のfig10)
大きな滑りを伴った垂直降下ラインとして帰結するため、これに引き続くロールやループを安定してこなすために相応の順応が必要となる。アンリミテッド競技者にとっては、スピンやスナップ後のロールとしてお馴染みのテクニックであろう。

ホリゾンタル・ナイフエッジからの45度ナイフエッジループ(シーケンス1のfig3)
非常に簡単であり、多くの機体で実現可能であることが想像される。

■ローリングループ系統

4ロール・フル・ローリングループシーケンス1のfig8
セグメントを区切れば区切るほど、ラダーで旋回しなければいけない弧角が減る。低パワー機には最適なローリングループ。4回もロールすれば、ラダーは機首を維持する程度+αで使っておけば、それなりにロールとヨーが調和しているように見える。2ロール目の後半にスナップするリスクがあるので慎重に回さないとHZをくらってしまう。誰も採点する人はいないのだが。

1ロール・ハーフ・ローリングループダウンシーケンスのfig8)
ループダウンにはアップとは違った難しさがある。アップの難しさは速度の減衰に起因する失速や円弧の変化などであったが、ダウンでは速度がついてくるためラダーに拠るヨーイングが難しくなってきて、コーディネートしづらくなる。特にロール回転数の少ないローリングループの場合、この問題が顕著になる。

1ロール・クオーターローリングループシーケンス1のfig7)
簡単にできる。

3ロール・225度ローリングループシーケンス2のfig5
キューバンの一部としていれこむことができるので、ローリングループから45度ラインへと以降するリズム感がたまらない。

ハーフロール・クオーターローリングループシーケンス1のfig7
ヨーに多少難有り。

3/4ローリングループシーケンス3のfig2
この機動の重要な点は、ヘディングを変えることができることである。垂直上昇時のハーフ(ないしは3/4)ロールに相当する役割を、シーケンス中でもたせることができる。開始ヘディングの水平線あたりを睨みながらやれば、姿勢が分からなくなることもなく楽に飛べる。下向きの場合ヨーに難有り。

3/4・3クオーターローリングループシーケンス3のfig5)
ユニークな機動である。8?の切り返し点(中間点)は、はぼヨーのみで主張することになる。やはりループダウンでのラダー操作が難しい。やったあとで気づいたが、これができるなら1ロール・フルローリングループも案外できるのかもしれない。この科目については地上からの評価を受けていないので、形が成立しているのかどうかはわからない。

シーケンス1                             







シーケンス2                              

シーケンス3                            






シーケンス4                             







ローリングループ系の機動は、従来のループ以上に柔軟な姿勢認識が必要である。特に上に向かってロールしている場合、地平線はつねに回転しているため、従来のループのように単に横を見るだけでは何の判断基準にもならない。視野角範囲内全体の色の配置とその回転をしっかりと満遍なく知覚しながら、一見何も指標が無いように見える空(実際はおだやかな色のグラデーションがあるので視野さえ開けていれば地上を見ているのと同じ)に自分のたどるべき道をしっかりと思い描いて飛ばなければ、すぐにオフヘディングしてしまう。一度できるようになると、ほんとうに自由に飛べているような気がして最高に楽しく、これまでにない開放感を感じるはずである。

2014年4月15日火曜日

ヨーロッパ選手権へ向けた準備(EASAライセンスの取得)

今年のExtra200はDHLからのスポンサードを受けてこんな色に。DHLチームの素晴らしいパフォーマンスはこちらから

かねてより私は、飛行機で最上級クラスの国際大会へ出ること(だけではなく、出続け、技量を高めていくこと)を目標として掲げていた。昨年度イギリスの地方大会でアンリミテッドクラスへ2度出場し技量を上げて、今年は国際大会だ!というところで立ちはだかる壁が、ライセンスと機体の問題である。誰の機体で飛ぶのか、その機体はどこの国に所属しているのか、飛ぶ国で必要なライセンスはどのようなものか。イギリスはこれまで日本のライセンスでそのまま飛べていた。しかし周知の通りヨーロッパの航空業界は変革期にある。EASAの到来である。来年の春頃?以降は、いかなるヨーロッパ籍の飛行機で飛ぶ場合においてもEASAライセンス(ヨーロッパ圏内の国際ライセンス)が必要となる。今年使用させてもらう機体は、大先輩から紹介していただいたスロベニアの競技者が所有する300Lであるため、なんとか今年だけなら期間限定の書き換えライセンスで飛べるということもわかった。しかしどうせ来年からダメになるのなら、さっさとEASAライセンスを採ってしまおうということで、3月に3週間ほど訓練をかねてイギリスに行ってきた。普段は面倒なことは後回しにする性格であるが、今回は仕事上の事情もあり、このチャンスを逃すと先が不確定であるとの考えから、取得に踏み切った。幸いなことに、ロンドン在住の日本人のSさんという方が、すでにEASAライセンスを保有されており、取得へ向けた道筋を示していただいたことも、面倒なことを始める大きなきっかけとなった。そしてなにより、いつもお世話になっているBritish Aerobatic Academy(http://britishaerobaticacademy.com)のAdrian Willis氏によるフルサポートを得られたこと、さらには実質的な訓練を請け負う学校であるRural Flying Corps(http://www.rfcbourn.co.uk/Rural_Flying_Corps_-_Bourn/Home.html)からの寛大なサポートを受けられたことが、順当に取得手順をフォローできたことの最大の要因であった。以下に、日本の自家用陸上単発ピストンのライセンスからEASAの同様のライセンスへと書き換える場合の手順の概略を示す。飛行時間が100時間を越えている場合の事例。あくまで私がたどった手順であり、これから変わる可能性も多々ある。これがヨーロッパのカオスである。少しでもこれから取得する人の参考になれば。


1:English Language Proficiency(航空英語能力証明)を受ける。
Level4以上が必要。Anglo Continental(http://www.anglo-continental.com/en/uk/courses/aviation/aviation-test.htm)というイギリスの英会話学校がスカイプによる受験を受け入れていることをSさんから教えていただき、受験に至った。TEAPというものがそれである。このページを全て読み、サンプルの音声を聞き、メールをして金を払って、指定の日時にスカイプでテスト。もしかするとこの試験は受けなくてもよいかもしれない。CAAからのメールには、技能試験の際に同様の試験を行なったことにもできると書いてあった。保障はしない。

1.5:British Aerobatic Academyに訓練受け入れの相談をする。
これは冗談のようでリアルな話、ヨーロッパ的カオスの中では信頼できる力のある人に面倒を見てもらえるかどうかが物事をうまく運ぶための鍵になることが多い。欧米という言葉にはドライな印象がつきまとうが、実際は・・・笑。本当はどこのスクールでも免許はとれるのだが、私はここに連絡して受け入れてもらうことを強くお勧めする。ウェブサイトに記載されているメアドよりもFaceBookのほうが連絡を取りやすい。

2:航空身体検査(JAR/Part-FCL Class 2 medical certificate)を受ける。
あらかじめ予約しておき、渡航したらすぐに受けておく。どこでもいいが、私はSさんから教えていただいたhttp://www.pilotmedicals.com/この診療所を利用した。とても人の良い医師で、検査も一瞬で終わった(おそらく10〜15分くらい?)。回転椅子に乗せられたりして半日検査されるポーランドとは対照的であった。ふつうのビルの中にあって、看板も何も出ていないし、電話しても出てくれないので30分ほど彷徨い歩いた。これがイギリス流。

3:学科試験を受ける。
必要な科目はAviation law と Human factors。ICAOライセンス所持者なのになんで今更、と思うところではあるが、本来は6個か7個試験項目があり、これでもかなり楽になっているらしい。準備としては、The PPL Confuser(http://shop.pilotwarehouse.co.uk/product210023.html)、という本があるのでこれを覚える。ここからほぼそのまま出る。Sさんの意志で、次に続く人にこの本を渡して、ということなので、私に連絡いただければこの本を手に入れることができる。これをすべて理解して覚えるのはとても大変。このへんも、上記の事情の分かっているスクールを通じて受けることができると、いろいろとやりやすくなるポイントである。

4:技能審査
ICAOライセンス所持者なのに・・・以下略。これだけはごまかしが効かない。延々と2時間以上にわたる飛行の中で微に入り細に入り技能をチェックされる。この飛行試験の準備のために、最低でも2回のフライトは必要だろう。私は特にナビゲーションが苦手で(数字と英語が嫌いなので)、苦労した。Adrianのはからいで、彼が地方巡業をするときのエクストラのナビゲーションを全てやらせてもらえたので、そこでだいぶ経験をつむことができたが、それでもやはりセスナでの不本意な訓練を2度行なうことになった。やらなければいけないことなのに嫌な顔をしてしまう私に辛抱づよく教えてくれたAdrianとRural Flying Corpsの教官には感謝してもしきれない。


以上全ての手順をこなしたら、スクールの教官と一緒に膨大な書類を書き上げ、ログブックと共にCAAに提出する。これで(おそらく)晴れて国際ライセンス所持者となることができる。


(エクストラでクロカン練習中)

ハッキリ言って私は試験だの勉強だの資格だのが本当に嫌いで仕方がない。なぜ仕事でもないのに、こんなに嫌なことばかりやらなければいけないのかと毎日思いながら、それでも夢の為にと思ってやっていた。曲技飛行というのは本当に割の悪い趣味だと思う。生活の全てをなげうって金を貯めても、その後に待っているのは書類、資格、勉強・・・嫌なことばかり。一体何をやっているのだろうか。体一つでできる趣味や道をもっている人が羨ましくて仕方がない。本当に嫌になる。そんな気持ちの唯一のはけ口が、曲技飛行(笑)。試験勉強のイラつきから逃れるかのように、一日5回ほどのフライトをエクストラで行った。その開放感といったらたまらない。飛んでいる間だけは、飛行機としての自分でいられる。そこには何の試験も資格もない。ただ空気があって、体があって、重力があるだけ・・・
(雲間で遊ぶ)


新しいフリーを作った。去年のは理不尽な難しさがあったので、すこし優しく、でももっとチャレンジングな難しさを入れ込んで、技量向上を目指す。大きな着眼はフリックのテクニック。最小のエネルギーロスで最大のアクセントを生み出し、なおかつ軸を通すのが課題。フリックは必然的にフライトパスの揺動を生み出すが、それをどう処理して直線として飛ぶか。
低速からの加速区間を作ったのは私なりの工夫。これで、200馬力の低出力機とは言えど、失高は1500フィート以内に収まる。


今年のノウン。動画を撮ると下手クソなのがよくわかってためになる。

慣れというのは興味深いものである。私のようなヒョロヒョロの青白い研究者でも、毎日毎日飛行を繰り返していると、最終的にはアンリミテッドのシーケンスを一日10回飛んでもあまり目立った疲れを感じなくなってしまった。プラスマイナス8Gが入れ替わり立ち代わりかかってくるため、一般的にはキツいと思われる訓練のはずだが、慣れてしまえばただ椅子に座っているのとあまり変わらない。とはいえ最後はテニス肘になってしまったのだが。

これで、ヨーロッパ選手権へ向けたおおまかな準備は終わったと言えるまだ細かい障害は山積みであるが)。これまで、障害にぶちあたる度に先輩方に助けられてきた。人の夢を応援すること、応援された人がまた別の人を応援すること、そしてお互いに向上していくということ、本当に良い循環だと思う。高い志を持った人々の力でネガティブな要素を全て排除し、straight forwardな仕方で夢に向かって挑戦していきたい。


2014年3月2日日曜日

熊谷めぬまグライダーフェスタ2014

残念ながら、熊谷めぬまグライダーフェスタでのフライトは、悪天候のため中止となってしまいました。
フェスタ前日のリハーサルは予定通り執り行なわれました。その際、航空写真家の山さんにいくつか写真を撮影していただきました。
ナイフエッジ姿勢で旋回しています。

川面でアクロ。

地上30mを背面姿勢、時速270キロでローパスします。公式なショーでは始めての試みだっただけに、本番でお見せ出来なくて残念でした。



朝日新聞デジタル
熊谷市のウェブサイト
http://www.city.kumagaya.lg.jp/kanko/event/maturi/gliderfesta.html