(これは、第14回世界滑空機曲技選手権への参加報告を若干改変し、転載したものです。写真は適当につけただけなので文の流れとはあまり関係ありません。)
本大会は私にとって4度目の世界大会出場となります。これまでの大会では、どうしても3分の1以下の順位から抜け出すことが出来ず、常に練習方法を模索しつづけてきました。今年度は、 前年までの反省を踏まえ、以下のとおり2つの訓練目標を掲げました。一つは、グライダーよりも 姿勢変化のインターバルの大きい動力機を用いて徹底的に訓練することにより、各個の姿勢とそ の変換における正確さ/明瞭さを身につけること、もう一つは、大会直前に大会で使用する機体 を用いて200発以上の飛行を行うこと、この2つです。
まず、今年の4月から5月にかけて、アメリカ・リバモア空港において、高木雄一教官指導の元、ピ ッツ S-2C を用いてインターミディエイトクラスの飛行を習得しました。40時間ほどの訓練飛行を行 った後、IAC の地方大会に出場しアンノウン競技で2位を獲得するなど、実り多い訓練となりまし た。 その後、6月下旬よりポーランドに渡航し、Solo-Foxを用いて1ヶ月ほどの集中訓練を行 いました。しかし、度重なる曳航機の故障、連日の悪天候などで、目標として掲げた200発には遠く及ばない60発程度の訓練飛行しかできませんでした。日本で鐘尾みや子さん 所有の複座 FOX を使用させていただき実施した訓練を含めても、100発にも達しておらず、焦りが募るばかりでした。しかし、7月下旬に出場したポーランドの国内選手権において、ノ ウン競技で2位を獲得することができ、そ れなりに訓練成果の存在を確認すること ができました。
7月26日より世界選手権は開幕しましたが、それから4日間悪天候が続き、飛行は行われません でした。アドバンスドの世界選手権と同時開催ということもあり、参加人数が多数であるため、大 会の成功が危ぶまれました。しかし選手権開幕から5日目、だんだんと天候が改善され、ようやく 飛行を開始することができました。
ノウンプログラムの飛行を終えた段階で、多くの競技者仲間より私の飛行の進歩を指摘されたこともあり、今年度の訓練成果をはっきりと確認することができました。最終的にはアンノウン2まで飛行す ることができ、悪天のわりにはそれなりに充実した選手権となりました。
最終順位としては9位、飛行順位におけるカテゴリー1(上位3分の1以上)に配分されるなど、例 年の大会における結果と比較すると明らかに向上がみられました。結果は以下のページがら確認できます。
概ね、上位から3分の2が中 堅どころ、3分の1が表彰台候補として考えられています。技量向上における最初の大きな壁を破ったとの手応えを感じています。
本選手権において、私の師匠であるポーランド人のイージー・マクラ氏(下写真左) が優勝となりました。
彼は、以前6回優勝し たこともあり、生きる伝説とも呼ばれる人物 なのですが、近年多忙により訓練回数が激 減したこともあり順位は低迷しつづけており ました。しかし今年度より若干の訓練環境 の改善が見られ、見事優勝となりました。
ポーランドは、今年3名の若手新人をアド バンスドクラスへ輩出し、アンリミテッドの国 別ランキングでも優勝するなど、しばらく続 いた低迷を脱し以前の勢いを取り戻しつつあります。
現在ヨーロッパは様々な制度の改変が行わ れ飛行に関しても錯綜を極める状況が多々ありますが、それでもこの初速を無駄にしないよう、今 後も良好なパートナーシップをもってポーランド、日本、両チームの互恵的発展を築きあげていき たいと思っております。
本年度の動力機訓練による技量の向上をうけ、来年度も同様の訓練を重ねてさらなる向上を目指します。具体的な訓練地は未だ模索中ですが、おそらくイギリスで Extra200 を用いた動力機訓 練を徹底的に行い、アドバンスドレベル以上の国内大会への出場を目指します。その後、再びポ ーランドにおいて200発以上、Solo-Fox を用いて飛行を行うことを目標としトレーニングキャンプ を計画します。
現時点において、滑空機曲技の日本人選手は私一人だけです。私はこの状況を打破したいと考えています。
そのため、昨年度より新人獲得へ向けた勧誘を行うと同時に、新人養成をヨーロッパで行うため の委託先を検討してまいりました。その結果、複数の競技者候補を見出すことができ、また良好な 関係にあるユーロッパ各国から受け入れ訓練の了承をいただくことができ、今後の新人養成にも光が見えてきました。
数年後には日本選手団と呼べるものを形成したいと考えています。日本は、 ヨーロッパ各国に比べると、文化、地理、勤務体系等、様々な面において圧倒的に不利な状況に あることは否めません。しかし、それを乗り越えるだけの能力をもった人材を集め、相互に指導し 合える競技者集団を形成することにより、日本の、そして世界の技量水準を引き上げることを目標 として活動していきたいと考えております。